遺族が直面する悲しみは、時に言葉で表現することが難しいほど深く、複雑です。
愛する人を失った後の心の傷は、見えないものの、その影響は計り知れないものがあります。
このような時、遺族にとって最も必要とされるのが、周囲からの理解と心理的サポートです。
しかし、遺族の周囲の方が「力になりたい」と思ったときに、どのように接していいのかと悩み一歩踏み出せない場合も多いことでしょう。
今回は、大切な人を亡くした方への支援に焦点を当て、周囲がどのようにサポートできるかを言葉の選び方から具体的なサポート方法まで、詳しく説明します。
「大切な人を亡くした人にどんなことばをかけていいかわからない」
「自分にできるサポートとはなにか」
と、お悩みの方のヒントになれば幸いです。
遺族への適切な言葉の選び方
遺族にどのような言葉をかけるべきかは、多くの人が悩む問題です。
励ましの意味でかけられたことばであっても、遺族の心の負担になる場合もあるからです。
なにげないことばで、遺族を傷つけてしまうこともあるため、かけることばの選び方には特に注意が必要です。ここでは、励ましの意味があっても避けるべきことばと、寄り添いの気持ちを伝えることばを紹介します。
遺族には避けたいことば
相手を気づかい励ますことばではありますが、大切な人を亡くした遺族にとっては「悲しみを軽視された」と受け取られる場合があります。 避けるべき表現として、以下のようなものがあります。
- 「時間が解決してくれますよ」
- 「もう天国で幸せになっているはずです」
- 「あなたが幸せにならないと」
- 「つらいのはあなただけではない」
- 「泣かないで」
「前を向いてほしい」「立ち直ってほしい」という意図で、使いがちな表現です。
しかし、まだ喪失の大きさを受け止め切れていない場合には、「自分の感情を軽視された」と受け取られる可能性があります。
悲しみや辛さを否定されたと感じてしまうと、ことばをかけられた側は自分の感情を伝えたり表現することをためらう原因になるため、避けたほうがよいでしょう。
励ましよりも寄り添うことばを
大切な人を亡くして失意の最中にいる方にとっては、励ましよりも”寄り添い”の方が重要です。
実際のアンケートでも、ありがたかったサポートの上位には「黙って側にいてくれた」「話をきいてくれた」などがあげられています。
励ましのために多くのメッセージを伝える必要はありません、寄り添う気持ちがあることを伝え、相手のペースを尊重しましょう。
- 「必要なときにはいつでも連絡をください」
- 「近いうちに会いましょう」
- 「あなたの悲しみを理解できるかわかりませんが、よかったら側にいます」
など、あくまで寄り添い共感する姿勢を保ちましょう。
悲しみや辛さは代わりに引き受けることはできません。また、喪失の痛みから回復する時間にも個人差があります。 遺族の方が話したくなったタイミングで、聞き役に徹することが一番です。
遺族への具体的な支援の方法
遺族への心理的サポートは、言葉だけに留まらず、具体的な行動によっても提供されます。ここでは、遺族の友人として実践できる心理面と物質的サポートの方法を探ります。
心理面でのサポート
- 聞き手になる
遺族が話したいときには、耳を傾け、話を聞くことが重要です。アドバイスを急がず、ただ彼らの言葉に耳を傾けることで、大きな支援となります。
- 共感を示す
「辛いことだったでしょう」といった共感の言葉をかけることで、遺族の感情を認め、理解していることを示します。
- 思い出を共有する
故人の良い思い出やエピソードを共有することで、遺族と一緒に故人を偲び、悲しみを共有することができます。
物質的サポート
- 日常生活での手助け
食事の準備、家事の支援、子供の世話など、日常生活での生活の手助けを申し出ることも有効です。悲しみが深すぎるあまり、セルフネグレクトに陥るケースもあります。そうしたことを避けるために、いつもどおりの生活を送れるように支援することも重要です。
- 葬儀の準備支援
葬儀の手配や準備、後処理など、遺族が抱える物理的な負担を軽減するためのサポートです。
- 長期的なフォローアップ
葬儀後も定期的に連絡を取り、必要なサポートを提供し続けることで、遺族が一人で悲しみに立ち向かう必要がないことを示します。
「自分を気にかけてくれる人がいる」という安心感につながり、孤独感を軽減できることもあります。
これらの具体的な支援方法は、遺族が直面する多岐にわたる課題に対応するためのものです。心理面でのサポートは遺族の感情的な回復を促し、物質的サポートは日常生活でのストレスを軽減します。
どちらも遺族がこの困難な時期を乗り越える上での助けとなるでしょう。
相手の視点に合わせたサポートを
自分の友人が、悲しみに暮れている姿を見るのは辛いものです。
「早く元気になってほしい」「悲しみから立ち直ってほしい」と思うのは当然のことです。
しかし、励ましのことば自体が、相手の気持ちを傷つけてしまうこともあります。
一般論の押し付けやお節介はかえって、相手の心を閉ざしかねません。
また、気持ちはあっても具体的なサポートができず心苦しく思う方もいるかもしれません。
それでも「気にかけてくれる人がいる」だけでも、遺族にとって大きな支えとなることがあります。
支える側としてはもどかしい気持ちもあるかもしれませんが、大切なのは、悲しみに共感し寄り添うことを忘れないでください。